| そけいヘルニアの手術は日帰りが基本 |
カナダやアメリカでは、そけい(鼠径)ヘルニアの手術は、日帰りが基本です。診察から手術、その後についての流れを簡単に紹介します。医師や医療機関によって、多少異なる事があるかもしれません。
■ 長い長い待機期間
ファミリードクターの初診から手術当日まで、早くて5ヶ月。手術1週間前にいきなり、重症患者の手術があるからと、手術日がいきなり1ヶ月以降になることもあります。
もしも、初診から手術まで半年かからなかった場合は、運が良かったと感謝したほうがよいかもしれません。
早く手術を受けたい人は、私立病院があります。ただし、費用は自己負担となるのでかなりかかります。
初診から手術当日までの待機期間は、バーナビーの場合、合計6ヶ月から9ヶ月かかっています。(2006年現在)
Aさんの例:
■ ファミリードクターで初診を受ける
1)ファミリードクターに電話をいれる。予約は数日から1週間あと。
2)ファミリードクターでそけいヘルニアの診断を受ける。診断には、超音波が使われる。
3)ファミリードクターが、手術担当専門医(スペシャリスト)に連絡を取り、予約を入れる。(数ヶ月待ち)
■ 専門医から初診を受ける
1)手術を執刀する専門医の診察を受ける。(超音波)
2)執刀医から検査を受けるように言われる。検査の予約を入れる。(数週間待ち)
→ ウエストミンスターの検査所は、バーナビーやバンクーバーよりも待ち時間が短いといわれている。
同時に手術を行う病院に予約を入れる。(数ヶ月〜5ヶ月待ち)
2)検査を受ける病院から、CTスキャン検査の準備のために来院するように連絡が入る。
3)検査を受ける病院へ行く。検査当日の説明と、検査前日に飲んでおく検査薬を渡される。
■ CTスキャン検査当日
検査を受けに行く。前日、検査薬を飲んでおく。
2)検査の結果は、1週間後にファミリードクターと執刀医に知らされる。
3)手術執刀医から検査の結果が出たので、来診するよう連絡が入る。
■ 専門家(手術執刀医)の診察 2回目
1)執刀医から診断を受ける。手術についての説明を受ける。
2)ファミリードクターから診察に来るように連絡が入る。
3)手術の3週間ほど前に、手術を行う病院から連絡があり、手術前の検査と麻酔師の打ち合わせが手術の1週間前にあることを知らされる。
■ 手術直前の麻酔師との打ち合わせと検査
手術の1週間前に、手術を行う病院へ行って、手術前の検査と麻酔師からごく簡単な説明を受ける。
検査は、心臓を含む。
検査の結果何もなければ、手術。
■ 異常が見つかった場合
1)ファミリードクターから、検査で異常が見つかったので、専門医に検査の結果を送り、専門医に予約をとったので、診察してもらうように言われる。
この時点で、手術の予約はキャンセルされる。
2)数週間後ぐらいに専門医の診断を受ける。この時点で問題がなければ、すぐに手術をする病院に連絡をして、手術の予約を取り直す。
3)専門医の結果は、ファミリードクターに知らされる。知らせを受けたファミリードクターは、あらためて、手術担当医に連絡を入れ、手術の日を確認する。
4)手術3週間前に病院から、手術前の検査と麻酔師との打ち合わせがあるとの連絡が入る。
そけいヘルニアと診断されてから手術までの過程: ブリティッシュコロンビア州 バーナビー Aさんの例
| 期間 | 予約、診察、検査 |
| 1ヶ月目 | ファミリードクターに予約を取るまで1週間 診断のときに手術施設に予約を入れたが、手術日は5ヶ月あとと言われる |
| 2ヶ月目 | 検査 |
| 3ヶ月目 | 専門医に会う |
| 4ヶ月目 | ファミリードクターから来るように言われ、検査結果から癌の疑いがあるといわれる |
| 5ヶ月目 | |
| 6ヶ月目 | |
| 7ヶ月目 | 手術前の検査を受ける 最初の手術の予定 (他の患者のためキャンセル) |
| 8ヶ月目 | 次の手術の予定 (検査で異常が見つかりキャンセル) 二人目の専門家に会いにいく |
| 9ヶ月目 | |
| 10ヶ月目 | 最終的な手術 |
■ 手術前日までの準備
退院どき用の下着は、カナダのパンツは、ゴムベルト式が多いが、新しかったりきつかったりすると、傷にくいこむ。調整のきく日本のゴムひもを使ったパンツや、古い下着をとっておくと良い。女性も、日本の男性用のパンツが楽。
手術後、最初に尿を出すときに、出なくて激痛で苦しむことがあるという。病院にいる間に問題が解決すればよいが、退院後に問題が起きるかもしれない。その場合には、救急医療に駆け込む可能性があることから、救急医療のある病院の場所と時間を確認しておいたほうが良い。病院によっては、昼は休刊を受け付けていても、夜間は受け付けない大病院もある。
手術後は、傷がひどく痛み、トイレへ行くのも辛い。ベッドはできるだけバスルームの近くになるようにしておく。
■ 手術当日
局所麻酔でも全身麻酔でも日帰りが原則。これは、国ができるだけ医療費を切り詰めようとしているためと予想される。もしも心臓に懸念がある、睡眠障害があるなど特別な事情があれば、一泊できる。
当日は、手術1時間半ぐらい前に受付に来るように指示がある。受付で簡単な質問があった後、検査を一通りして、麻酔をかけ、手術開始となる。
手術は、1時間から2時間かかる。手術の終了時間は、看護婦に聞けば教えてもらえる。
麻酔が覚めた後、ゆっくりと休んでから帰宅できる。手術後、尿が排出できず苦しむ事があるので、できれば病院で粘ったほうが良い。
手術後の医師からの報告だが、家族へは、手術室の外で待っていても、携帯電話がある場合には、執刀医師から電話が直接入るかもしれないので、携帯電話の電源は、病院施設内で使用OKならば入れておいたほうが良い。
車で自分で運転して自宅へ帰ることは禁止されている。このため、家へ連れ帰ってくれる手伝いの人が必要。帰宅後も、痛みでほとんど動けない状態なので、24時間面倒を見てくれる付き添いの人が最低数日間は必要。
■ 付き添いの人
入院した場合、子どもの患者以外は、付き添いは病院には泊り込めない。
手術を行う病院で、当日、付き添っていてわからないことがあれば、病院内にいるボランティアの人に聞けばいろいろと教えてもらえる。
■ 薬
手術後にはいろいろな薬の処方が出る。傷の痛みがひどいかもしれないので、薬局はできるだけ空いているところを探す。
・鎮痛剤 タイラノール アドヴァイルの中でも、処方箋がないと購入できない強い作用のある成分が含まれている。
・酔い止め 気分が悪くなるのを抑える。
・便秘解消薬 便秘が予想以上に辛い。
・アセトアミノファン 処方箋が必要な強い薬を飲み終えてしまったときのバックアップ用。
おなかにガスがたまると、相当に辛い。ジンジャーエールを飲むと、ガスを排出する助けになる。
■ 氷嚢
病院で、紙とプラスチックでできた使い捨ての水枕のようなものをもらっておくとよい。これで患部を冷やすと、少しは楽になる。
■ ファミリードクターと手術執刀ドクターに予約を入れる
手術が終わったら、その日のうちにファミリードクターと手術担当医に診察の予約を入れておく。特にファミリードクターは、1週間後には必ずあえるようにする。なぜかというと、痛みがひどい場合、医師の処方箋がないと鎮痛効果の強い薬は買えないのと、傷に不安があっても、予約がなければみてもらえないため。予約なしのウォークイン クリニックも可能だが、待ち時間が長く、待っているのが辛いかもしれない。
■ 手術後の痛みと腫れ
手術後の痛みは、人によるかもしれないが、数日間が最大ピーク。腰痛など持病のある人は、副作用として痛みがひどくなる可能性があるので要注意。
開腹手術をした場合、腫れは、高さが数センチから長さが十数センチぐらいになり、手術前よりも患部が盛り上がることもある。この症状は、退院後数日からひどくなり、1週間以上にわたる。盛り上がりがなくなるのは、3ヶ月以上たってから。
傷口の色が変色したり、その他、異常が見られる場合には、退院時に執刀医から言われた指示に従う。
家庭での注意点としては、下着が傷口に触れる事のないように気をつけたり、ベッドの乗り降りは、重心をできるだけ下げる努力をする。
■ 費用
公立の病院なら、メディケアに入っていれば、薬代以外はすべて無料。Extended health に入っていれば、一部薬代がカバーされる。
■ 職場復帰
開腹でメッシュを入れた場合、痛みは2ヶ月以上続く。職場にいつ復帰するかは、専門医の所見をもとにファミリードクターが決める。
職場復帰は、痛みと体力が落ちていることがありフルタイムはきついので、最初の1週間は午前中だけ出勤するなどのように徐々にできるのが理想的。職場にエレベーターがないため階段の上り下りがきつい、重い物を運ぶ作業が多いという場合には、あらかじめファミリードクターに言っておいたほうが良い。
■ ファミリードクターに職場提出用の報告書を書いてもらう
職場に病欠を報告するときに、医師からの証明書が必要だが有料。現金で支払う事になるので、1万円ほど準備しておいたほうが良い。
■ <体験者からのメッセージ>
メディケアには入っていれば、診察費、検査費、手術費のことを心配しなくてもすむのは、カナダの医療の良いところ。でも、初診から手術当日までの期間がとても長いのは、精神的にかなりこたえる。
日帰り手術は、体力のあるカナダ人でもかなりこたえる。日本人にとっては精神的も肉体的にも、とても大変な事になる。このため、家族からのサポートは必須。
日本の健康保険に入っているのであれば、帰国したほうがはやく手術を受けられるだろう。ただ、手術後、1ヶ月から人によっては2ヶ月以上たっても痛みがあるので、飛行機の中で長時間同じ姿勢でいなければならないのは難しいかもしれない。
そけいヘルニアは、筋力が衰えてなることが多い。50歳を過ぎてからの手術は、体力的にかなりきつく、手術前は体力や健康に自信があった人でも、手術を境にぐっと体力や免疫力が落ちると感じる人は少なくないと思われる。
腰痛など持病があると、手術がきっかけで悪化したり、治っていたと思ったのがぶりかえし、傷以上に辛い事になるかもしれない。
これらのことを考慮して、仕事復帰のスケジュールを慎重に検討したほうが良い。
体調が元に戻るまで約1年かかった。1年半たち、傷もだいぶ平坦になった。











